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全世界に友達をつくろう!事業のゴールは多様性のある社会

HelloWorld株式会社

冨田 啓輔さん、野中 光さん

2024年3月31日 公開

HelloWorld株式会社 冨田啓輔代表取締役 Co-CEO、野中光代表取締役 Co-CEO

「世界中に友達をつくって交流したい」子どもたちが描くそんな純粋な想いを世界に届け、対話により多様性ある社会を築くことに情熱を燃やす沖縄のスタートアップがある。HelloWorld株式会社は「まちなか留学」と「WorldClassroom」を通して、沖縄市コザから、質の高い英語学習と国際交流体験事業を世に広めている。
設立のきっかけや事業内容、今後の展望について、代表取締役 Co-CEO冨田啓輔さんと野中光さんに話を伺った。

HelloWorldが目指すソーシャルインパクトな事業

HelloWorldは「世界中に1ヵ国ずつ友達がいることが当たり前の社会をつくる」をミッションに活動している。分断のない平和な社会づくりには多様性への受容力が必要不可欠であり、多様性ある社会からイノベーションが生まれるとの考えからだ。
子どもたちと教育現場にソーシャルインパクト(社会的影響)を与える3つの事業を展開している。

まず、日本にいながら週末気軽に外国人宅でホームステイする「まちなか留学」。All Englishのホームステイや日帰りプログラムを通して異文化を体験する。2024年3月時点で9,000名人の利用者を誇る。

まちなか留学は、ホームステイを通して異文化体験(提供写真)

また、外国人とチームを組んでAll Englishでミッションをクリアしていく探究フィールドワーク「まちなかロゲイニング」は、エンターテイメント性のある英語教育コンテンツで、子どもたちの好奇心を刺激する教育プログラムだ。同時点で利用者は13,000人にのぼる。

さらに、音声認識技術を活用したスピーキング練習や海外との国際交流をサポートする「WorldClassroom(ワールドクラスルーム)」も展開している。例えば、授業中に画面を通して外国の教室にいる同世代の子どもたちと繋がることで、子どもたちは新しい友達をつくる感覚で英語を練習できる。教科書に載っている文章よりも、互いの趣味や好きなスポーツの話をする方が自然な英会話の練習ができるのだ。
生徒の英語力向上に加えて、自動化システムによる教員の負担軽減を実現している。こちらも同時点で約40,000人の利用者がいる。

WorldClassroomは、画面を通して世界中の学校と一緒に学習できる(提供写真)

HelloWorldは、これらの事業を、沖縄や関東を中心に学校や自治体と共に展開している。

テクノロジーと身近な外国人との連携を活用することで、経済的理由や学歴により留学や国際交流の機会を制限されている子どもたちに、低コストで高度な英語教育を提供している。

設立のきっかけ、”いいバランス”な2人のCEO

取材に応える冨田さん(左)と野中さん(右)

HelloWorldの設立は2020年10月。
海外に住む人と友達になれるアプリ「Paike(パイク)」を開発していた冨田さんと、別会社で「まちなか留学」を事業として進めていた野中さん。そんな2人が、2018年に福岡で行われたスタートアップピッチイベントで出会ったことがきっかけだった。

「まちなか留学とPaikeのビジョンが非常にマッチしていたんですよね。コロナ禍の影響でマネタイズに悩んでいたこともあり、互いに協力して事業を成功させることで、多様性のあるコミュニティ形成が実現できると思いました」と当時を振り返る冨田さん。

スタートアップイベントをきっかけに共同事業を持つなんて、野心と好奇心に溢れる起業家らしい行動力!と感銘を受ける一方で、まだ出会って数年のパートナーと会社経営をすることの難しさはないのだろうか?

「(取材を通して)僕らを見ていて感じるかと思うのですが、僕は0→1領域や、現状に囚れずにドラスチックな意思決定やアクションができるのが強みで、で、冨田さんは合理性・実現可能性・汎用性ある仕組みを考えて、それを形にすることを強みとしています。。ぜんぜん違うふたりだから、逆に上手く行くんです」と野中さん。

2人が出会ったイベントで、「Paikeさんですよね?」と最初に話しかけたのも野中さん。積極的で、やりたいことに対して突っ走るタイプだという。

一方、元弁護士という経歴を持つ冨田さんは、野心と好奇心を持ちつつもロジカルに進めていくタイプ。

確かに取材を通して感じたのが、2人の”丁度いい”バランス。
正反対な代表2人がいるからこそ、スピードが求められるスタートアップ経営において、迅速に協力して決断を下すことができるのだろう。

「社内でもコミュニケーションを大切にしています。HelloWorldは今、経験豊富なメンバーが増え、第二創業期を迎えています。2024年の4月からは正社員が30人ほどになり、業務委託等を入れるとチームは全員で60人を超えます」と野中さん。創業から3年半。事業拡大に向けて人材確保にも力を入れている。

社会に多様性を届ける英語教育を目指す

冨田さんは「僕らのビジョンは、社会に多様性を届ける教育事業です。継続するためには収益性は重要です。、一方で、経済的に余裕がない子どもたちにもサービスを届けるための活動も行っています」と語る。

全ての子どもたちに留学体験を届けたいと始まった「まちなか留学基金」は、経済的理由によりまちなか留学に自費参加できない世帯に向けて無償で機会を提供しており、これまでに65人の利用者がいる。2024年度には更に多くの機会提供を見込んでいる。

に「WorldClassroom(ワールドクラスルーム)」事業においては、沖縄県のものづくり生産性向上支援事業の活用からスタートし、沖縄金融公庫からも支援を受けた。

野中さんは「沖縄のスタートアップに対するサポート体制はとても充実しています。補助金関係もそうだし、いろんな人を繋いでくれる。沖縄総合事務局をはじめ、沖縄県庁の担当者さんにもかなり助けてもらいました。また、人同士が繋がりやすい環境で、問題解決のキーマンとなる存在が近くにいることが多い。それも沖縄だからこその面白さです」と話す。

WorldClassroom(ワールドクラスルーム)」の事業化においても、育休中の英語教師の協力を得て、実際に授業で必要なものを試行錯誤して進められた。

HelloWorldのオフィスがある沖縄市コザという立地も、多様性を目指す事業をさらに加速させる環境要素の一つかもしれない。

オフィスは、県内でもスタートアップの聖地として盛り上がる「スタートアップ商店街」の中。すぐ隣には起業・支援施設「Lagoon KOZA」があり、様々なスタートアップや起業家が継続的に生まれ、互いに刺激し合う環境が整っている。

〈キャプション〉「コザスタートアップ商店街」の通り。右側の建物2階にHelloWorld株式会社のオフィスがある

さらに、商店街を出れば米軍嘉手納基地の入り口に繋がる「ゲート通り」と呼ばれるインターナショナルなストリートがあり、特に週末は、外国人を含む多くの人々で盛り上がる沖縄のナイトシーンを楽しむことができる。

冨田さんも、2020年に初めてワーケーションで訪れた際、昔ながらの商店街と外国文化が入り混じるまさに「ちゃんぷるー」なコザに魅了され、沖縄移住を決意したのだそう。

「沖縄のスタートアップを支える環境は整いつつあると思います。起業に関する知識共有の機会も良いですが、沖縄の現状を見ると、まずはスタートアップで働く人を増やすことも大事かなと感じています。スタートアップの楽しさ、面白さを知ってもらえるのでは」と語った。

スタートアップの楽しさを知ってほしいと語る冨田さん(右)と野中さん(左)

多様性のある社会とは?「世界中すべての国に友達がいる!が当たり前の社会」

「まちなか留学」、「まちなかロゲイニング」「WorldClassroom(ワールドクラスルーム)」。HelloWorldの事業はどれも「多様性」や「国際交流」がテーマとなっている。

最後に、冨田さんと野中さんはこの多様性や国際交流に、どのような魅力を感じるのか聞いてみた。

野中さん「視野を広げて自分を広げる手段です。日本も沖縄も島国で、自分たちの世界でしか生きていないし、自分の可能性もその物差しで測ってしまうことがある。海外での出会いや出来事は、それ自体は大きな意味はなくても、将来の自分の選択に影響を与えます。自分ってもっと自由でいいんだと思えることが、多様性と国際交流の魅力です」

冨田さん「多様性において、色んな人をいかにごちゃまぜにするかが大事だと思うんです。多様性のある社会こそがイノベーションを生み出し、分断や分離、対立が起こらないような仕組みを作ります。僕は、争いの反対は平和ではなく対話だと思っています。そして、対話を生み出すのが国際交流だと思います。我々がつくっているのは、多様性をかき混ぜる装置なんです」

多様性のある社会実現の象徴こそが「世界中に1ヵ国ずつ友達がいることが当たり前の社会」。

どの国にも自分の友達がいれば、その土地で起きている問題を自分ごとと捉え、異文化も理解しようとする姿勢が自然と生まれる。それこそが平和な社会への第一歩かもしれない。

「多様性」「国際交流」をキーワードに、英語教育事業に力を入れるHelloWorld株式会社。沖縄市コザから世界に平和を広げるスタートアップの成長から、今後も目が離せない。

取材・文/稲福 加奈

HelloWorld株式会社

設立
2020年10月1日
代表者
冨田 啓輔さん、野中 光
本社所在地
沖縄県沖縄市中央1-7-8
ウェブサイト
https://www.inc.hello-wolrd.city

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