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観光の未来へ飛翔するエアモビリティ事業
“起業のプロ”が誓う「沖縄への貢献」

株式会社Blue Mobility & 株式会社琉球ウェルネス

道廣敬典さん

2024年2月21日 公開

それが世に出た瞬間に「どうして今まで無かったんだろう?」と誰もが思うサービスがある。皆が不便を感じていたけれど、当たり前過ぎてその不便を当然だと思っていたもの。または、もともと存在していたけど、その価値を見出されずに人に知られてこなかったもの。
そんな隠れた「可能性」を見出し、「沖縄に貢献したい」と奮闘する起業家、株式会社Blue Mobilityの代表・道廣敬典さんにお話をうかがった。

移動をエンタメに昇華!
沖縄旅を変えるヘリコプターバス

ハイシーズンの沖縄本島に観光にやってきて、こんな経験はないだろうか? 

那覇空港に到着し、急いでレンタカー会社の集合場所へ向かったけれど、送迎の乗り合いで他のお客さん待ち。やっと送迎車が走り出したと思えば大渋滞に捕まり、無為に過ごすこと数十分。レンタカー事務所でも長い順番待ちの末、なんとか手続きを終えて走り出したものの街はもちろん渋滞、高速道路に乗ってさえもまた渋滞。貴重なバカンス時間が車の中で消費されていく……。

ハイシーズンの那覇で渋滞にハマると、運が悪ければ北部まで4時間ほどもかかることもあるという。多くの観光客が島に戻ってきている現在、渋滞は観光客にはもとより、車社会で日々の生活を営む島民にとってもかなり深刻な問題だ。

「現状、那覇の渋滞は仕方ないんですけど、でも何もしなければ、観光客の皆さんの中に嫌な思い出が残る。先々お客さんが来なくなっちゃうと思うんですよ」と、爽やかな笑顔と真剣な眼差しを共存させて語り出した道廣さん。沖縄の未来を真剣に憂い、観光体験を劇的に変化させる「ヘリコプターバス」のサービスを生み出した人物だ。

ヘリコプターからは、眼下に島と美ら海を望む圧巻のパノラマビューが楽しめる

ヘリコプターバスの運航は週末の土日。スマホで事前予約&決済を済ませおくと那覇空港でスタッフが出迎えてくれ、待ち時間なしでヘリポートへ。渋滞という概念を地上に置き去って上空約200mに浮上すれば、眼下には圧倒的なパノラマビューが広がる。目的地の恩納村や名護には、25〜30分ほどで到着だ。
しかも既存のヘリコプターチャーターと比べ、おひとり様2〜3万円と料金が破格となれば、マスコミがこぞって取り上げるのも納得。全国放送のTV番組でも度々紹介され、新しい移動&観光の形として注目を浴びている。

「起業当初は、航空法とか何も知らなかったんですけど、でもこれは絶対にやった方がいい!というワクワク感があって」と道廣さん。

儲からない!だけどやる!は
大好きな沖縄の未来のため

以前から需要があっただろうこのヘリコプターバスのサービス、なぜ今まで実現する人がいなかったのか?と質問してみると「そう思うでしょう?でも、ひとことで言うとこのビジネス、めちゃくちゃ大変なんですよ」と、道廣さんは前のめり気味に。

クラウドファンディングサイト「Makuake」でのプロモーションを兼ねたプロジェクトは、目標額の160%を達成、大成功のうちに終了(画像はMakuakeより)

「まず、普通にやったらメチャメチャ儲からない(笑)。たとえば沖縄ってスコールが多いじゃないですか? 大雨だと当然、安全重視なので機長判断で飛行が中止になってしまう。そういったリスクもろもろ考えると収支が全然合わなくて、単体の事業としては、やっていけないんです。だから、Blue Mobilityとしても、ヘリコプターバスの他に7つぐらいの事業を展開して収支を合わせる方法を見出して(笑)」

なぜ、収支の合わないヘリコプターバス事業を、そこまで知恵を絞って遂行しようとするのか?そこには、道廣さんが抱く沖縄の未来への危惧がある。

「那覇周辺の車が不要なエリアだけで観光が完結してしまうと、北部で消費が生まれず、経済的な格差を生んでしまうことになります。それに観光エリアの多様性がなくなって『また来たくなる沖縄』にならないのがすごく嫌で。沖縄が憧れの地、大切な場所であり続けてほしいと思うときに『沖縄に久々に来たけど、やんばる(県北部の名護市や国頭村を含む山地一帯)の自然がめっちゃすごい!』とか、そう思ってもらえるものが存在しているのに、その体験が提供されてないところに機会の損失を感じていて」と語る道廣さん。

では、かなり以前からこの事業の構想をあたためていたのかというとそうではなく、実は道廣さんが「人生をかけて達成したいもの」と語るウェルネス事業の展開を模索する上で派生したのが、エアモビリティ事業なのだという。

このウェルネス事業は、道廣さんがかつて東京でがむしゃらに働いていた時代、沖縄の自然に心を救われた体験と深い繋がりを持つ。

起業のプロが沖縄でゼロからのスタート
「ウェルネス」との運命の出会い

ここで道廣さんの経歴を披露したい。

リクルートエージェント(現リクルート) を経て、株式会社サイバーエージェントで広告事業局長・事業責任者・組織活性化責任者を歴任、100億円規模の事業をいくつも立ち上げ、並行してスタートアップ支援とコンサルを手がける自身の会社を起業。その後ヘイ株式会社(現:STORES 株式会社)の執行役員に就任し、3年で売り上げを10倍に。
東京という大舞台で推しも押されぬ活躍を見せた事業立ち上げのプロフェッショナル、それが道廣さんだ。

アドレナリン全開で働く東京での日々は充実していたが、成功すればするほど大きくなる責任が、時に仕事の面白さを超える重圧になって両肩にのしかかっていたという。

「その頃は『成果を出さないと僕の存在意義はない、自分をトランスフォームし続けないといけない、もっと頑張らないと』という思いと、個人の感情ではなく役職者の立場から言葉を発しないといけない葛藤でどんどん疲れていって。でも沖縄の北部に来ての自然に囲まれていると、『よく考えたら俺、相当頑張ってるんじゃ?』とか、腹を立てていた仕事相手のことも『あの人と仕事できるって、実はめちゃくちゃ恵まれてるやん?』とか、考えがものすごく前向きに変わって、それで東京に帰る、みたいなことを繰り返して」と笑う道廣さん。

10年以上前からSlackやChatworkを駆使して仕事をしてしてきたという道廣さん取材当日は、画面の向こうに社員の皆さんもご臨席

そして、2022年、コロナ禍が収束に向かう中「結婚する時に、40歳までには沖縄に、と決めていたから」と、奥様の実家のある沖縄に移住。当初は「沖縄で起業する」とは決めていたものの、事業内容は全くの白紙状態だったという。
「沖縄に知り合いも友達もゼロだったので、東京の知り合いたちに沖縄の知人・友人を紹介してもらい、その年の夏の3ヶ月間で100人くらいの方々にお会いして。知り合った方に、また別の経営者の方をご紹介いただいたり」と、持ち前の行動力とコミュニケーション力で人脈と知見を広げていったのだそう。

「そうした中で『ウェルネス』や『ウェルビーイング』という概念に出会って興味が沸いたんです。どうやら『ウェルネスツーリズム』というのは世界的な潮流だし、沖縄の自然に癒された自分の経験からしても、これは沖縄らしい事業として「あり」だと」
こうして道廣さんは移住の翌年1月、「株式会社琉球ウェルネス」を起業した。

ウェルネスツーリズムとは?
健康やリラクゼーションを目的とした旅行形態。スパ、ヨガ、マインドフルネスなどの健康促進活動や施設を提供し、旅行者が心身の健康を向上させることを目指すもの。

琉球ウェルネスのメインターゲットは、日本の経営者や法人、海外の富裕層。かつての自分のように、責任や時間に追われる人々に心と体の健康を取り戻させ、そしてなにより滞在地であるやんばるの自然や文化の素晴らしさを知らしめたいという。そしてそれは、過疎化と高齢化が進むこの地域に、経済的恩恵をもたらすことにも繋がる。

「この琉球ウェルネスのお客様を北部に運ぶためにヘリコプターサービスを作りたくて、知人の紹介でSpaceAviationの保田社長を紹介していただいて。そこからいろいろお話をしていくうちに、このヘリコプター事業を会社として育てて、沖縄全土、ひいては日本に貢献できるようなサービスに育てられるんじゃないかということになって」というのがBlue Mobilityが生まれた経緯なのだそう。

ヘリの前に立つ道廣さん。「ヘリコプターバス」は、Blue Mobilityがマーケティングやシステム開発、オペレーションを担当し、運航はヘリの運用で実績を誇るSpace Aviation株式会社が担う

現在、Blue Mobilityと琉球ウェルネスの共同プロジェクトとして、高付加価値高単価型ツーリズムの実現に向けての企画が進んでおり、インバウンド地方創生の補助金も獲得している。
ちなみに、Blue Mobilityの立ち上げは、琉球ウェルネス立ち上げの約2ヶ月後。起業のご経験が豊富だったとはいえ、新天地で相次いで会社を立ち上げる道廣さんのバイタリティは、お話を伺っていて感嘆させられた部分。
しかし、彼が沖縄で目指すところは、世のいわゆる「スタートアップ」とは少々趣が異なっている。

一丁目一番地は
「沖縄に貢献すること」

沖縄に救われ、沖縄が好きすぎて、息子の名前にも「琉」の文字が入っていると笑う道廣さんは「沖縄で起業するにあたって1つだけ決めていたのは『沖縄に貢献すること』だったんです」と真剣な面持ちで続ける。

「巨大なマーケットに太いパイプを挿して、水路を張り巡らせてシュアを独占して『だから時価総額いくらです』ってなると資金調達もしやすいし、それがスタートアップの作り方なんですけど、僕たちの事業はそうではないので、投資家にとってさほど魅力的じゃない。ただ、僕たちしかできないことを提供し、僕たちしかできないマーケットの作り方をするから、沖縄にめっちゃめちゃ貢献できると思うんですね」

観光という巨大産業に新規に乗り込む過程で、既存のコンテンツプロバイダや関連地域からの反発はなかったのか?と問うと、道廣さんは笑顔で首を振った。

心と体を癒し、明日への活力を得る原点回帰の旅「ウェルネスツーリズム」を沖縄から日本全国、そして世界へ

「これまでの観光は、単価は安いけれど観光地に大量に人集めるという掛け算で回っているマーケット。そして、僕たちが仕掛けている観光は、その真逆。高付加価値で高単価で、限られた少数の方々にサービスを提供するモデル。だから、既存のプロバイダや観光事業と僕のやりたいビジネスモデルはバッティングしないんですよ。もちろん、お会いした方々にはきちんと説明して、意見も伺って、ものすごく丁寧に事を進めましたけど、猛烈な反対とかはなかったです(笑)」

Blue Mobilityでは、今後さらにヘリの停留所を増やしていき、周辺の離島を含めた沖縄本土全体にサービスを拡大していく予定だそう。また、観光交通としてだけではなく、災害時の救援物資の輸送や怪我人の運搬など、地域の防災システムとしての役割も担っていくことも、重要なミッションとしてかかげている。

道廣さんがインタビュー中に何度も口にした「沖縄に貢献」という言葉は、単に耳に心地良いキャッチコピーではなく、リアルに事業に落とし込まれている。

望む世界の実現するための
試行錯誤がスタートアップの醍醐味!

東京で数々の新規事業を打ち立ててきた方に失礼かと思いつつも「沖縄でピッチイベント等に参加されたことは?」ときいてみると「意思を持ってあえてしなかった」とのお答えが。

「沖縄では『僕がやりたいこと』をやりたかったから、知らない誰かに批評して欲しくなくて。その代わり、信頼している人や、意見が欲しい人にはめちゃくちゃ壁打ちはしました(笑)。ちょっと調子に乗ったように聞こえるかもだけど、ピッチコンテストはもちろん素晴らしい意義があるんですけど、起業におけるたくさんの手段の一つであって。イベントに出なくても、壁打ちをしてもらえるとか、仲間が集まるとか、資金が集まるとか、応援してもらえるとか、自分の思考を深めていける方法が別にあるんだったら、そっちの方が効率がいいわけです」と、スタートアップのコンサルタントとしての顔を覗かせた。

今回のインタビューも会社の登記も、場所は那覇市のコワーキングスペース「C.O.L」。「人と会うことは大切だけど、場所やオフィスにこだわるような会社は作りたくなかった」という

沖縄のスタートアップについて思うところを尋ねてみると「僕自身、今の自分の事業をスタートアップだとは定義していないんですが」と前置きしつつ「1つだけ思うのは、沖縄には思いを持って事業をされてる素晴らし起業家さんは沢山いるんですけど、沖縄だけで閉じずに他県にサービスを広げるとか、良いプロダクトを世界に広めるとか、もう少し目線を上げていってもいいんじゃないかな、と思ったり。どうしたら自分が望む世界が実現できるか、この社会にとっても良いものを考えるそのプロセスがすごく尊いと思うし、それがスタートアップの醍醐味だと思うんですね。だったらまず飛び出して、どうやったら可能になるか試行錯誤してみたらいい」」と、沖縄でも既にサポート側としても活躍している道廣さんならではの実感も語ってくれた。

道廣さん自身も、日本の観光業界全体がインバウンドに対して攻めあぐねてる「高付加価値・高単価型のウェルネスコンテンツやエアモビリティの開発」の道筋を作ることを目指しているという。

「沖縄で僕たちが作ったものが、例えば北海道とか、日本全国で展開されて各地域で一定の事業として確立すれば、日本の生産性が上がるじゃないですか? これってすごい価値だと僕は思っていて」と事業の長期戦略に目を輝かせる道廣さん。

「沖縄に貢献」という志を大切に抱きつつ、彼の目線の先はヘリコプターからの俯瞰のように、広く遠くこの国の未来にまで向けられている。

取材・文/楢林見奈子

株式会社Blue Mobility & 株式会社琉球ウェルネス

設立
2023年4月(株式会社Blue Mobility)
資本金
800万円(株式会社Blue Mobility)
代表者
道廣敬典
事業内容
株式会社Blue Mobility:エアモビリティ事業(ヘリコプターバス/タクシー)
本社所在地
那覇市銘苅 3-9-22 KAキャンディービル2階
ウェブサイト
https://bluemobility.co.jp/

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