国内外の優れた研究者とともに沖縄から技術移転と産業革新を目指す沖縄科学技術大学院大学(OIST)。スタートアップを支援するインキュベーション施設「OIST Innovation Incubator」も運営している。
Incubator担当の鈴木真司さんは「起業家のみに限らず、研究開発型スタートアップに関わる人材支援や経理支援、VC等も入居が可能です。スタートアップエコシステムの参加者が、情報を自ら求めアクションを起こす環境が理想だと思っています。OIST Innovation Incubatorは、それらが可能な場所と機会を提供しています」と話す。
施設があるのは、OISTキャンパス内であり、500㎡の施設である。シェアオフィスとラボが混在する環境で、最大40人程度の収容力がある。
施設内にはオープンスペースになったデスクルームや専用オフィス、共用ラボスペース、専用ラボスペースに分かれている。
2024年4月時点でアグリテックやバイオテクノロジーのスタートアップなど、さまざまな業種の45企業が登録している。スタートアップのみならず、人材採用や経理支援、営業支援を提供する支援企業も入居している。
現在の入居企業はこちらから確認→https://groups.oist.jp/ja/innovation/new-oist-innovation-incubator-members
こちらはホットデスクのスペース。サテライトオフィスとしての利用も可能だ。
施設の中で最も特徴的なのは、高性能の機械が揃う共有ラボだ。
「ウェットラボ」では一般的な理化学実験が可能。1ベンチ単位で利用できるシェアラボとなっている。「ドライラボ」では、3Dプリンターやレーザーカッターなど、ものづくりに特化した機器を設置している。
鈴木さんは、「研究開発型スタートアップの成長において、特に初期段階は莫大なコストがかかる場合があります。高性能な機械を共有できることは大きなメリットになります」と鈴木さん。
どれだけ革新的な技術を持っていても、スタートアップとして事業を発展させ、継続するためには、環境を整えなければならない。
当施設ができた背景には、2018年から県と連携してスタートしたアクセラレータープログラムがある。
世界から集まった起業家を支援するプログラムを実施する中で、起業後のスタートアップを継続して支援する環境構築が求められたという。
ラボの他に共用できる設備として、共用研究機器(純水製造機、冷凍庫、オートクレーブ、遠心分離機、3Dプリンター等)、8名で利用可能な会議室、OISTの会議施設とイベントスペースへのアクセス(別途使用料発生)、Wi-Fi、複合機、防音対応の電話ブース、共有キッチンがある。
OIST発スタートアップをはじめとした研究開発型スタートアップの増加に合わせ、Incubator施設の需要も高まっている。
2025年には、キャンパス内に新たにInnovation Incaubtorの2号館、3号館の計2200㎡ (各1100㎡)が完成する。
恩納村の美しい自然に囲まれたOISTから、さらに多くの起業家が生まれることが楽しみだ。
利用者の声
EF Polymer 株式会社
CEO
ナラヤン ラル ガルジャールさん
独自技術により水不足を中心とした世界の環境問題の解決を目指すスタートアップ「EF Polymer」創業者兼CEOのナラヤンさんは、「まだ設立間もないスタートアップの私たちにとって、OISTの最先端の研究設備へアクセスができることに加え、企業や地元のネットワーキングの支援を得られる点が非常に魅力的なことです。今後も事業を拡大させ、世界中にサステナブルな製品を届けられるよう取り組んでいきたいです」とコメントした。