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沖縄スタートアップ図鑑

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trueblue玉村さん
起業家図鑑

海はひとつ、世界はひとつ。
世界の海でアップサイクルが常識になる世界へ

NPO法人オンザロード

玉村めぐみさん

2025年3月4日 公開

自身の経験から、環境問題に全く関心がない人にも、興味を持ってもらえる「きっかけづくり」を大事にしているというTRUE BLUE共同代表の玉村さん。環境活動というと、どうしてもその問題提起やストーリーを語りがちだが、単純に「欲しくなる可愛いものを作ることが先決」という。発信力と影響力を増す彼女の、その先にある真っ直ぐな想いと魅力に迫った。

大好きな沖縄の海の変化に気づいたことが
きっかけで始まった取り組み

近年観光地としても注目されているエリア、「やんばる」とも呼ばれる沖縄本島の北部。今帰仁村の海に浮かぶ古宇利島は、本島と「古宇利大橋」で繋がり、気軽に往来できることもあって年間約80万人もの観光客が訪れる。大橋はその両側に広がる海と島の景色が素晴らしく、観光客でなくても島に渡る際には思わずテンションが上がる。ちょっとした離島感が味わえる古宇利島、この小さな島をにTRUE BLUEの店舗はある。

映え写真が取れることでも人気の古宇利大橋

小道を入り、ひと気の少ない海沿いの道を走っていると、思わず車を止めたくなるカフェのような、木造の素敵な建物が現れる。ここがTRUE BLUEの店舗だ。眼前に海が見渡せる開放的な店内に足を踏み入れると、カラフルでお洒落なアクセサリーや小物が展示販売されていて、奥にはワークショップができる体験スペースが。たまたまここに辿り着いた人には、このお店に並べられている商品がまさか「海洋ゴミ」から作られたアップサイクルのものだと気づかないだろう。

古宇利島の海の目の前にたつTRUE BLUEの店舗の外観

2023年1月末にオープンしたこの店を取り仕切るのはTRUE BLUEの共同代表、玉村めぐみさん。沖縄が大好きで、美しすぎる海で泳ぐ度にますます海に惚れ込むようになったが、毎年のように通ううち、珊瑚の白化現象や、海の様子が変わり始めたことに気づいた。その違和感を感じてからまもなく、海のゴミが原因で、ウミガメをはじめとする多くの生き物たちの命が犠牲になっていることを、よく耳にするようになった。それまでは全く環境問題に興味がなかったという玉村さん。しかし、沖縄の海が少しずつ、けれど確実に変化している現状を肌で感じたことにより、環境問題を自然と意識をするようになっていった。

「このままこの問題をスルーしてしまったら、自分が後悔しそう。まずは一人でも、何かできることをしたいと、静岡の地元の海でのごみ拾いから始めました」

彼女の思いが形になったきっかけが、もう一人の共同代表である高橋歩さんとの出会いだ。沖縄で長く活動を続けていた高橋さんとの出会いによりプロジェクトがトントン拍子で進み、構想から2年も経たずにお店のオープンへと繋がった。目標は「世界中の海をきれいにする!」こと。現在、海洋プラスチックだけに止まらない環境活動を展開している。

1ヶ月で300人!開業したばかりのお店の
体験ワークショップに人が集まる理由

TRUE BLUEに並んでいる商品を見た最初の感想は「めっちゃ可愛い!」。それこそが、玉村さんのこだわりだ。「環境問題に全く興味のない層の人たちに、新たにその扉を開けるのが私の役割」という。一番の人気商品であるアクセサリーやコースターなどのアイテムもとにかくお洒落で可愛く、デザインにこだわっている。

店内に並ぶ海洋プラスチックで作られた可愛い商品たち

「商品のストーリーを話して買ってもらうのではなく、環境問題に興味のない人に『めっちゃ可愛い!欲しい!』と思ってもらって『え?これ海洋プラでできてるの?海のゴミってこんなのになるの?』って後で知ってもらえたら、それでOKなんです。」

元々環境問題に興味がなかったところから現在の活動に至る、ご自身の経験を生かした彼女らしいアプローチだ。「ゴミからゴミを作っても意味がない。可愛くないと、売れないし、循環していかない。」彼女の至ってストレートな想いは、本質をついている。


主な収入源は、海洋プラスチックからキーホルダーなどを作るワークショップ体験。女子旅やカップルも多いが、夏休みの子供の自由研究の題材としても人気を集めていて、多い時は毎日3−4組の家族が体験。月にすると300名ほどがワークショップのために来店する。

一番人気の「海洋プラ」体験ワークショップ

お洒落で可愛いものを作りたい。そしてそれが環境にもいいことだとなお良い。海にいいからだけじゃ人は集まらない。その一貫したアプローチは広報やマーケティングにも存分に役立っている。開店当初は全く広告費を使っていないにも拘らず、お店を立ち上げて数ヶ月後の夏休みに、すでに月に200名ものワークショップ体験のお客様が来店したが、当時の自社広報はSNS発信のみ。

ワークショップで作れるオリジナルキーホルダー

開店当時、インフルエンサーに無料で体験取材を依頼したが、その横のつながりで「TRUE BLUEの活動を応援したい」と、県内の7組ものインフルエンサーが続けて来店し、投稿してくれたのだそう。その他にも「沖縄 雨の日」「北部特集」などのキーワードで、雑誌やメディアにも掲載された。実際、ワークショプ体験の人に何を見て知ったかを聞くと、「インフルエンサーや来客者が発信したSNSや、Google検索、旅行サイトで取り上げられた記事」など多くの人が発信してくれた情報を見てお客様が集まっている。

店舗の受付。店内はどこも思わず写真が撮りたくなるオシャレさ

それも立地、建物、商品、空間づくりに至るまで「見た目」から興味を持ってもらえたからこそ。「環境活動」的なストーリーよりも、それに興味のない人たちも単純に「可愛い」や「欲しい」と思えるようなアプローチにこだわったからこその成功だろう。
玉村さんは、活動を循環していくための資金づくりも大事にしている。
「ボランティア活動も広がって、世の中には素敵な活動がたくさんありますが『環境にいいこと=お金にならなさそう』っていうイメージがあると思うんです。お金になることが継続にもつながることもあるし、環境に良いことしている人こそが稼いでいいと思う。環境問題に取り組む人を増やすためにも、世間のイメージを変えていきたいんです。海を綺麗にしながら収入も得ることができるんだと思えば、みんなやり出すと思う」と、継続的な活動とその人数を増やしていくための取り組みも行なっている。知識0の状態から、ワークショップの開催方法、海のゴミの選別方法、アクセサリー作り方講座等が学べ、6ヶ月で収入を得られるようになるスタートアップ講座、アーティスト養成講座の開催が、それだ。また、卒業した後も、より知識を深められるよう、認定講座や、認定資格も作った。

TRUE BLUEの名を世界に轟かせたい!楽しいことしかしたくない!
まっすぐな気持ちがつなぐ世界

現在は、クロアチアに店舗をオープンするプロジェクトも進んでいる。本の取材でご縁があり、クロアチアの小学校でワークショップをした際に現地のNGOと繋がった。観光地としても人気で美しいアドリア海だが、ゴミ処理場が首都サグレブしかなく、ゴミは全部船で運ぶしかないという問題がある。海洋ゴミの問題はこの海でも存在するが、ビーチクリーンをしても、わざわざ船で運ぶ必要があり継続性が難しい。この問題解決に、海洋ゴミを現地で利用できる上、環境についても学べるTRUE BLUEの活動がマッチ。市長自ら「どうにかしてくれないか?」と依頼してきたのだとか。

また、若者たちが世界中を船で旅する「ピースボート」とのコラボ活動も行っている。世界の海洋ゴミを回収して、船上でアートを作るアクティビティなどを展開している。

新しい商品としては、海洋プラで作ったレコード盤がある。結婚式やお祝いイベントなどレコードにメッセージが込められるものだが、聞こえてくるメッセージが「海のゴミから」生まれたものだという発想もいい。

海洋プラスチックで作られたレコード。メッセージをこめて届けられる

音楽好き、レコードが好きという人にも、「かっこいいじゃん!」と、関心を持ってもらえるように制作したそう。それまで興味は全くなかったが、好きなことや趣味から環境問題を知り、人生で初めてゴミ拾いを始めたという人もいるのだとか。

もう一つ、現在カンボジアで行っている活動に、地雷撤去の際に廃棄される、地雷の周りを覆うプラスチックをアップサイクルする取り組みがあり、こちらはアクセサリーを作っている。アクセサリーの売り上げの一部を地雷撤去の費用として寄付する仕組みで、カンボジアの地雷博物館での販売や、カンボジア政府と共に地雷のアップサイクルに取り組んでいくことも決まっている。

カンボジアの地雷からでたプラスチックとアクセサリー

世界中には地雷が1億個埋まっているといわれていて、撤去だけではなく、ウクライナなどの地域では、今なお新たに地雷が埋められている場所もあるという。

「今後、地雷のプラスチックからもレコードを作って、アーティストさんとコラボして、世界平和に向けたメッセージを伝えていけたら良いなと思っているんです」

このようにTRUE BLUEの活動は多岐にわたっている。「1番大切にしていることは、まずは自分たちがワクワク楽しみながら活動すること。その結果、海が綺麗になったり、世界平和に繋がったら良いなと思います。海洋ゴミだけじゃなく、大きい括りでアップサイクルに取り組みたい」という玉村さん。
「アップサイクルの知識でやれること、役に立つことがあれば、場所を問わず、世界に向けてもどんどん広げていきたいです。」

世界の海でアップサイクルが常識になる世界に

共同代表の高橋歩さんとTRUE BLUEの全国ツアーも開催。発信することの大切さを痛感している。店内には自社商品だけでなく、漁具や魚網、ブイなどを回収・粉砕してアップサイクルしたものや、ペットボトルアーティストなど、海洋ゴミの活動されているアーティストや作家さんの作品も展示販売して、自分たちの活動だけではない、広がりや影響力を大事にしている。

店内には他のアップサイクルアーティストや作家さんの商品も

最後に、今後の展開について伺ってみた。

「養成講座の卒業生がたくさんいるので、彼女たちに活躍をしてほしいと思っています。TRUE BLUEとしては、日本には1箇所拠点があれば良いと思っていて、今後は世界中に拠点を持ちたいです。世界の海でアップサイクルが常識になってほしい。みんなができる工房が世界中にあるっていうのが理想です」と語る玉村さん。多くの方が、ゆるく長く続けていける環境づくりを目標にしているという。

「海洋ゴミ」は可愛くておしゃれなもの作りの収入になる「資源」であり、それが環境問題にもつながっている。一人の熱心な活動家を育てるよりも、その新たな目線が、関心が持てる人を一人でも多く増やすことにつながっていきそうだ。

NPO法人オンザロード

設立
NPO法人2008年5月10日/TRUE BLUE 事業2022年10月
代表者
玉村めぐみ
事業内容
海洋資源のアップサイクル事業、教育事業
本社所在地
沖縄県国頭郡今帰仁村古宇利385(TRUE BLUE)
ウェブサイト
https://wds.world/trueblue
E-mail
trueblue@wds.world

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