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更年期女性の心に寄り添い、身体を科学するオンライン診療「ビバエル」

HerLifeLab株式会社

オリガ・エリセーバさん

2024年3月16日 公開

生理や妊娠にまつわるフェムテック商品やサービスを多く見かけるようになったが、女性の更年期ケアについてはどうだろうか?
HerLifeLab株式会社の代表取締役CEOでOIST(沖縄科学技術大学院大学)の博士でもあるオリガ・エリセーバさんは、過酷な更年期症状の体験を通して、日本の社会が更年期の女性たちに正しく向き合えていないことに気がついた。
スタートアップとして更年期オンライン診療サービス「ビバエル」を立ち上げ、「我慢しないで」と女性たちにメッセージを伝える彼女に、起業の経緯とこれからを取材した。

更年期女性を対象にしたオンラインサービス「ビバエル」とは?

2022年5月、2人の共同創業者とともにHerLifeLab株式会社を設立したオリガさん。

経営理念は“「心」に寄り添い、「身体」を科学する”

世界的に不十分だという女性へのエイジングケアに手を差し伸べる更年期専門のオンライン・婦人科診療外来サービス「ビバエル」を事業としている。

「初潮や妊娠、子育て世代とは違って、更年期女性への関心が低いんです」と訴えるオリガさん。ビバエルを通して自分の身体を理解し、西洋医学と東洋医学を合わせた治療を受けることができるという。

オリガ・エリセーさん

月に30〜40人の女性たちを診察

更年期の症状は、ほてりやのぼぜ(ホットフラッシュ)、不眠、動機、肩こりや頭痛など様々。一人ひとりに合った丁寧な診断が必要だ。

ビバエルは完全個別診療で、オリガさんを含めた更年期専門の医療従事者によるカウンセリングと、産婦人科医の高宮城直子医師が診察を行う。現在は、月に30〜40人ほどの女性がビバエルを頼って受診するという。

オリガさんは「それぞれの体調と症状に合わせて個別の相談ができるのがビバエルの特徴。東洋医学と西洋医学の両方を取り入れており、多様な治療提案ができます」とサービスの魅力を語る。

ウェブで簡単に予約ができ、オンラインで診察可能、処方された薬は自宅まで発送してくれるので、どこにいても女性たちがサポートを受けられる。

女性たちは自分を一番後回しにしている

流暢な日本語で取材に応じてくれたオリガさん。出身はベラルーシで、同国国立医科大学卒業後、国立血液研究所で医師として働いていた。1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故で感じた当時の医療の限界もあり研究者としてキャリアチェンジを決意。日本からベラルーシに来ていた日本人医師との縁で1996年に来日、日本での生活をスタートした。

当時は日本語が全く話せなかったが、大阪大学研究所で仕事仲間の日本語を聞き取りながら1年ほどで会話を習得したのだそう。

「周りが関西の男性ばかりだったので、男っぽいやんちゃな日本語ばかり話していたんですよ。恥ずかしい思いをしたこともあります(笑)」と笑うオリガさん。とても明るくてチャーミングな女性だ。

2男1女の子育てをしつつ、2012年にはOISTの理化学研究所にて癌免疫研究に従事するために沖縄へ移住。全てが順風満帆かと思いきや、研究者としてキャリアを積む日々を、辛い更年期症状が襲ったのだという。

「ひどいホットフラッシュに悩んでいましたが、有効な診断をしてくれる病院がなく、3軒目でやっと信頼できる医師に出会いました。その時とても気持ちが楽になったのを覚えています」とオリガさん。

更年期の女性たちのキャリアやライフスタイルを支える十分な環境がないことに違和感と憤りを感じるようになり、彼女たちのためのサービス開発と起業を意識し始めたという。

OISTプログラムへの採択、高宮城医師との出会い

オリガさんが事業開発に向けてまず動いたのは、周囲にいる女性たちへの調査。

どんな症状に悩んでいるのかアンケートを進めるうちに、想像していた以上に女性たちが症状を我慢していることに気づいた。

「更年期に関する研究は少なく、メディアでもあまり取り上げられません。『女性は我慢すればいい』という環境が現実でした」

サービスのアイデアと事業開始への意思が自分の中で固まったとたん、起業を後押しする流れが一気に彼女を巻き込んだ。

「『アルケミスト 夢を旅した少年』という私が好きな本に『And, when you want something, all the universe conspires in helping you to achieve it.”(あなたが何かを強く望むとき、全ての宇宙がそれを実現する)』という言葉が出てくるのですが、あの時の私はまさにそんな感じでした。OISTのアクセラレータプログラムに採択され、パートナーの高宮城医師やスタートアップへの投資に精通した大塚響子さんと出会い、まさに台風みたいに一気に起業の準備が進みました」と経緯を語るオリガさん。

左から高宮城医師、オリガさん、大塚さん(画像はPRTIMESより)

023年12月にはシードラウンドにおいて6千万円の資金調達を経て、現在はさらなる医師の確保やより多様な治療プランの提供を目指すしている。

かなり多忙な日々を送っているようで、取材日も、急遽決まったというフェムテックイベントの打ち合わせに追われていた。

「お身体は大丈夫ですか?休めていますか?」と質問すると「そうなんです。診察中は皆んなに休んでと言っているのに、自分の休みを見落としがち(笑)。自分とチームの仲間の体調管理には、人一倍気をつけないとね」と微笑んだ。

会社の医療チームは、婦人科病院で日々女性の健康に毎日向き合っている医師や看護師、助産師。社内でも働く女性のロールモデルを目指し、体調が辛い時は互いに共有し支え合うことを大切にしている。

「ある患者さんで、体調が悪いことを会社の部下に言えていないという方がいました。『あなたの部下にはあなたのように症状を我慢して働いてほしいんですか?正直に状況を伝えて助けを求めてみたらどうでしょう?』とスタッフがアドバイスしたところ、次の診察に来た彼女の表情は一変して、体調もとっても良くなっていたそうなんです。まずは共有することから。助けを求めることって大事なことなんです」と、女性がついつい後回しにしがちなセルフケアの重要性を訴えるオリガさん。

最後に、日々頑張る女性たちに伝えたい思いを伺ってみた。

更年期の女性たちに伝えたいこと

「さまざまな情報がインターネット上にあるけど、自分ごとにできず我慢している女性が多いのです。例えば、子供や旦那さん、親、一番最後にケアするのが自分。一度立ち止まって、自分を見つめ直してほしい。社会に合わせる必要は時はあるけど、いつも我慢しなくていいんです。不調な時は休んで、自分の身体と心を理解しましょう。ビバエルが、仕事や家事を頑張るあなたを支えるきっかけになってくれたら」(オリガさん)

将来的には、沖縄で医療を提供できる女性向けの健康センターを設立したいという。

頼もしい医師と研究者が共同で取り組む更年期ケアへの挑戦に今後も目が話せない。

取材・文/稲福 加奈

ビバエル公式サイトはこちらから▶️https://vivalle-mydoctor.com

HerLifeLab株式会社

設立
2022年5月
資本金
36,598,653円
代表者
オリガ・エリセーバ
本社所在地
国頭郡恩納村谷茶1919-1 OIST イノベーションスクエア・インキュベータ
ウェブサイト
https://vivalle-mydoctor.com

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